2021年10月7日
空の色の模索過程
今回の展示もですが、私の作品制作では「空」はよく描きます。作品それぞれによって「空」の意味合いは違うのですが、ここでは特に空色について模索した作品の制作過程を紹介したいと思います。
これも過程・描き方は人それぞれ。私もこの作品の場合はこのようにしましたが、少しでも制作過程をお伝えすることで作品に親しみを感じて頂けたら幸いです。
まずスケッチ、ドローイングで構図やイメージを固めます。
そこから、本画に進みます。このサイトで紹介したように水張り、下地様々な工程を踏んでいきます。その最初の方が以下のような感じです。
空の下地と風景のモチーフを配置しながら全体の明度も調整していきます。
そのまま描き込んでいきます。
しかし、空が暗くなりすぎたため、再度明るくしていきました。
なかなか納得がいかず描き込んでいくうち、少しバランスが取れてきました。
大分完成が見えてきました。この作品の場合は空の色味の調整、手前の電線、それぞれを描いては消して、描き起こしてを続けていきました。
全体のバランスを取りながら制作するスタンスで描きましたが、先ずは空の色味をある程度決めるところまでに時間をかけました。モチーフになっているのは本当に身近な毎日見る風景です。ふと自宅に帰る帰り道に見る空。たまにドキッとさせられる空色のときがあり、それを描きたいと思っていました。
タイトルは「明日の空を想う時間」
着想を得た枕草子の一文は
【261段(部分) うれしきもの】
まだ見ぬ物語の一を見て、いみじうゆかしとのみ思ふが、残り見いでたる。さて、心劣りするやうもありかし。人の破り捨てたる(やりすてたる)文を継ぎて見るに、同じ続きをあまたくだり見続けたる。
いかならむと思ふ夢を見て、恐ろしと胸つぶるるに、ことにもあらず合せなしたる、いとうれし。
(現代語訳)
まだ読んだことのない物語の一巻を読んで、とても続きを読みたいとばかり思っていたが、その残りを読むことができた。さて、思っていたよりも内容が劣っていることもあるのだが。人の破り捨てた手紙を貼り継ぎして見る時に、ぴったり合わさった文の続きを何行も続けて読むことができた。
どうなのだろうかと思う夢を見て、恐ろしくて不安に胸が潰れている時、何でもない夢なのだと解釈してくれたのは、とても嬉しい。
何気ないことに喜びを見つけたり、日々の中で思いがけず出会う景色。
そこを巧みに表現した清少納言の言葉に私も日々を改めて思い起こされ、あぁこの空を表現できないだろうか。そんな風に考え制作しました。