2021年10月14日
枕草子にみる悠久の轍 安冨洋貴 山名しおり二人展 展示風景の紹介 1
昨日より始まりました展覧会。展示風景を随時アップして参ります。
最初にDM作品の紹介です。それぞれ額装しておりますので、アクリルに映り込みがありますが、その点はご容赦くださいませ。
また、枕草子の一文との展示風景も掲載しますので、少しでも雰囲気が伝わればと思います。
まず安冨さんの作品です。
タイトルは「Nocturne」です。これに対する枕草子の一文としては以下を引用されています。
【26段(部分) 心ときめきするもの】
よき男の、車とどめて、案内し問はせたる。 頭洗ひ、化粧じて、香ばしうしみたる衣な
ど着たる。殊に見る人なき所にても、心のうちは、なほいとをかし。待つ人などある夜、
雨の音、風の吹きゆるがすも、ふと驚かる。
高貴そうな男が、家の前に車を止めて、使いの者に何かを聞かせにやった時。 髪を洗って化粧をして
、しっかりと良い香りが焚き染められてついた着物を着た時。その時には別に見ている人がいなくても
、心の中ははずんだ気持ちになる。
恋人の訪れを待つ夜は、雨の音や、風が吹いて建物を揺らす音さえも、あの人が来たのだろうかと思い
、驚き嬉しくて、胸が騒ぐものだ。
[Nocturne]は美術では「夜景画」、音楽では「夜想曲」の意味で使われますね。
ご本人ではないので、あくまで私の感想ですが「心ときめきするもの」の一文に対応されていたことを考え、作品を拝見していると、どことなくリズムや音の響きを感じ私は「夜想曲」のイメージを持ちました。クラッシック音楽で有名なノクターンが色々ありますね。皆様はいかがでしょうか。
次は私のDM作品です。
タイトルは「想う日」です。以下対応文です。
【27段 過ぎにしかた恋しきもの】
過ぎにしかた恋しきもの
枯れたる葵(あおい)。雛遊びの調度。二藍(ふたあい)、葡萄染(えびぞめ)などのさいでの、押しへされて、草子(そうし)の中などにありける、見つけたる。また、をりからあはれなりし人の文、雨など降りつれづれなる日、さがし出でたる。去年(こぞ)のかはほり。
過ぎさったころのことが恋しく思い出されるもの
祭りに使っていた枯れた葵。雛遊びの時に使った道具類。二藍や葡萄染めなどの切れ地が、押しつぶされて、本の中に挟まっているのを見つけた時。また、ふとした時に、かつて好きだと思っていた人の手紙を、雨などが降っていて手持ち無沙汰な日に、たまたま探し出した時。去年使っていた夏扇。
過ぎてしまったことを想うこと、それが日暮れ時に、ふとその一日のこと想う・・・そんなイメージと繋がり、この一文を選びました。私自身が枕草子の中で好きな一文でもあります。
実際は作品の前にこんな感じで展示しています。
色々な見方を楽しんで頂けたら幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。